屋上看板4面への手描き看板の製作
上記写真は、10階建てのビルの屋上に設置する看板の仕事でした。非常に高いそのビルの屋上看板4面に、当時のお店の社長様のお顔を、直径5メートルもの巨大なイラストで手描きするという大変な案件でした。
もちろん、当時は今のような便利な印刷技術もありませんから、全てが手作業。巨大なカンバスに見立てた壁面と向き合い、一筆一筆、心を込めて描いていきました。しかし何より大変だったのが、その作業環境です。10階建ての屋上の足場には、今では考えられないかもしれませんが、しっかりとした囲いが無かったのです。
正直に申しますと、風が吹くたび、下を見下ろすたびに、足がガタガタと震えるのを必死でこらえながら筆を握っていました。あの時の緊張感と、高所での作業の厳しさは、今でも忘れられません。
それでも、全ての作業を終え、地上から完成した巨大な社長様の笑顔のイラストを見上げた時の達成感は、言葉にできないほど大きなものでした。苦労した分だけ、その看板が近隣のシンボルの様なオブジェクトの一つとして輝いて見えたのを思い出します。
あのようなスリリングな経験も、今となっては私たち「看板屋」の勲章のようなものかもしれません。どんな状況でも最高の仕事をする、その一心で看板と向き合ってきた日々を懐かしく思い返しつつ、これからの看板製作にも一台一台に魂を込めていきたいものです。